苦きしの





いつまでだって泣いてていいよ。ずっとここにいてあげるから。
なによ、ぐす、 そういうこと、たくさんの、女の子に 言ってるんで、しょ。
……そうかもね。

 僕が呟くと、そう決め込んだ本人であるはひどくショックを受けたような顔をして、赤く腫れている目をパチパチさせた。その兎のような目尻にはまだ薄く、本当に薄くではあるけれど水が溜まっている。あなたには、心遣いってものが、まるでないのね。と、彼女は考えているだろうな、と僕は想像する。僕は充分、君を気遣っているんだけど、どうやら君はそれには気がついていないらしい。しきりに目をこすってはその度に出てくる涙に困惑している君を見ていると、気遣いたくもなるってものだ。彼女からしてみたらかなり惨めな状況を僕に見られているわけだから、ひねくれた言葉の一つや二つ出てきても不思議ではないけど、このまま僕がただデリカシーのない人間として君に認識されるのは、僕としては少しいただけない。

……っ!? な、なに、リーマス、 手、
ねぇ、いつまで泣いてるんだい?
…さっきと言っていることが、 すん 違うわよ?
君は笑ってる方がいいよ、。ほら、立って。
わ、
ローブに埃ついてるよ。
リーマスって、意外と力、強いのね。
…おとこだからね。君は軽いし。ちゃんと食べてるの?
ん、実を言えば最近あまり食べてないの。食欲なくって。

 その原因をつくった綺麗な髪の女の子を僕は思い浮かべた。それがもし男だったらどうしてやろうかと思ったところだったけど、幸いなことに彼女はすごくちゃんとした女の子だし(ジェームズが好きになるぐらいなのだし)、はその子のことをとても大事に思っているし、あちらものことが本当に大切だろうから、何をしようという気も起きない。ただ僕は、君と彼女が出来るだけ長くけんかしていてくれることを心の中で祈った。だって明日になると君はやっぱり彼女の隣でいつも通りに笑って、いつの間にか僕の優しさなんて忘れてしまうだろうから。

リーマス。
なんだい?
ごめんね。せっかく心配してくれたのに、素直になれなくて。
……いいよ。
泣き始めるとあまのじゃくになってしまうみたい、私。
そうだね。
だからね、私のそばにいてくれて、ありがとうって、今言うね。ありがとう。
…ずっとそばにいるって、言ったから。
………リーマスは、私が泣きやむとあまのじゃくになるのね。

 おかしい、といってちいさく、君は笑った。